想像を超える日
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夜明け前、Nさんが恋しくなる。
これは性欲なのか、性欲を否定するわけではやいけれど、これは愛ではないと言う方が納得がいく。
カバンを開けると、昨日から入れっぱなしにしていた折りたたみ傘から、湿った匂いがした。
物質が直接嗅覚を刺激するような。

めずらしく酔っ払ったNさんが、寝入り際に呟いた。

髪を撫でながら、結局自分は何をしたいのか考えた。

答え。
この人の行く末をこの目で見たい。

気が付けば、道路工事の騒音は止んで、原付が遠ざかって行く。

Yの結婚式。
帰り道はやはり少しさみしい気持ちなったけど、新横浜にはNさんが迎えに来てくれてる。
こんなことがずっと続きますように。


今日が記念日であることを耳元で囁くと、Nさんは、そう?ゴールデンウイークじゃなかったっけ?とうそぶいて、キスをしてからこう言った。

「でも、俺だって覚えてるよ。俺が帰り送るって誘った時、君はすごく驚いた顔して、それでも付いて来たんだよね。それで俺に引っかかっちゃたんだね。」



Nさんの言動に何度も傷ついたことがあるのは確かだ。
でも、その度に仕返しをしていたのかもしれない。
無言で。無抵抗で。

それは道理で言えば仕返しとは正反対の行為かもしれないけれど、実は人の良心に付け込んだ、周到な復讐なのだ。

そうやって俺は人を窮地に追い込んできたのかもしれない。

人でなしと言わんばかりに俺に噛みついた日比谷線でのHのように。
私は階段に腰掛けている
花火が開くたびあたりを浮かび上がらせる
再び闇を見つめる私の目には
あなたの横顔が焼き付いている

そんな風にあなたを思い出す
浮かんでは消える花火の影
そんな風にあなたを思い出す

それは仕方が無い事だと今は分かる
それでも記憶は温もりを持ち
乾いた心を潤す

そんな風にあなたを思い出す
浮かんでは消える花火の影
そんな風にあなたを思い出す




5分遅刻中。
花曇り、やや肌寒い。
何と言う幸せな待ち時間。


ああ、、、
俺は人に恵まれている。




Nさんが韓国に行くかもしれないという不安に対して特に何もしないまま、それに慣れていた今日この頃、転職の話題が降って湧いた。
まぁ、おそらくは切り出すタイミングを図っていたには違いなのだけど、離ればなれになる恋人達のCMの後に「実は俺さぁ」と切り出したのは、このイベントによって、何らかの、少なくとも物理的な変化が二人の間にできることを意識していたことを、今振り返れば感じる。

横浜か静岡か。
どれほどの可能性がそれぞれにあるのか、多分Nさんも知らないし、俺も聞けなかった。

もう4年もここに住んでいるのに、なぜ今そうなってしまうのか…それはだだっ子の言い分ではあるけれども、それがやはり正直な気持ちで。

あまりにも居心地のよい場所を知ってしまった今、俺はこの変化について行けるだろうか。

どこをどうとっても、Nさんの選択は正当で、公明正大で、俺はかっこいいとさえ思ってしまうのだけど。

居心地のいい場所を、この先も作っていくには、俺もそれなりの覚悟と努力を強いられるというわけか。
いやー
恋って怖いね。
なんでこんなに疑い深くなるんだろ。